===================== 鑑定人はだまされない ====================

新企画   −“絶対確実な遺言書” とは−   完全版

【「指紋押捺(鑑定)付き遺言」で美しき遺産相続を】

○“人を狂わせる相続 ”をピシャリと押さえる指紋の活用

            没後、指紋は、語る。

はじめに

遺言はなぜするのか。その背景を大きく分けると、自分の意思を反映させることと没後の財産を円滑に継承することである。しかし、あなたの意思が没後完全に達するように何か対策をしているだろうか。今日の遺言をめぐる裁判・紛争は、本人性の証明の限界という制度の欠陥も誘発原因の一つになっているが、何いっても、遺言者自身による防止策が何一つなされていない、ということが最大の原因である。

遺言をめぐっては、「いつだったか、父が遺言を書いておくと言っていたが、どこにもない。誰か隠したんじゃないか」とか、あるいは「この遺言書は、おかしい。母の字ではない。一番有利な長男が偽造したのではないか。」などと疑心暗鬼になって争う事例がある。これらは、ほんの一例だが、指紋は本物で、遺言内容と署名が偽者という精巧な鑑定事例もあった。

日本公証人連合会の資料によれば、コンピータに登録されている「公正証書遺言」件数は、平成151月現在で約76万件ある。年間平均では約5万5.000件に当るが、最近になって書く人が増えてきているという。ここに、自分で書く「自筆証書遺言」を加えるともっと倍以上になるだろうと言われている。その理由は、「遺言知識の普及」「遺産価値の高額化」「相続税の対策」「遺産分割の紛争防止」などといったところだろう。日本公証人連合会は、紛失、隠蔽、破棄などの行方不明の公正証書遺言を確認するため、「遺言検索システム」を設け、問い合わせに応じている。だが、問いあわせがなければ当然分からない。

ここで取上げるのは、相続をめぐる「遺言書」やそれに関する「遺産分割協議書」「養子縁組届け」「生前贈与の領収書」などの真偽をめぐった争いを未然に防ごうというものである。一旦争いになると、身内だけに感情が先走って骨肉の争いに発展し、しかも裁判沙汰になると深刻かつ長期化する様相を呈している。特に、遺産が高額になればなるほど相続分が欲しくなるのは世の常だから、そこに問題が生じ、現実の裁判事例や鑑定事例がこれを如実に物語っている。最近目立つのは、最初から遺言を残していなかったが故に、しばらくしてからある相続人に有利な自筆証書遺言が突然出現してくることである。

そして、一番問題なのは、争い事が発生した時点では当の本人が墓の中であるため全く知るよしもないし、また、遺言者は既にいないからどちらが本物なのかを証明することが困難なことである。現在の「遺言制度」が完全ならば、紛争には至らないはずだが、鑑定事例から知る限りでは制度に足りないところがうかがえる。だから、遺言をする人も、しない人も、もっと先見の目を持って親族の固い絆を維持するように偽造・偽装防止を配慮する道義的責任があるといってもいいだろう。そこで、生まれたのが「指紋押捺(鑑定)付き遺言書」である。あなたとあなたの家族が築いてきた大切な財産を後世に活かす必要がある。

1 今日の課題

 今、鑑定事例からたどると自筆証書遺言をめぐる問題として次の3つが見られる。

@はたして本人が書いたものかどうか真正=本人性が不確かであること。

A偽造遺言書が出現していること。

B裁判や紛争が高額な費用、長期化、親族間の遺恨などで深刻化していること。

では、これらの内容をみて見てみよう。

@は、本物の自筆遺言書が、「普段の親の字ではない」といった指摘が出されて紛糾し、これを証明するのに大変な苦労と期間を要したというものである。遺言書を書いた人と遺言者が同一人であるかどうか、本人性が問われている。

Aは、没後しばらくして突然遺言書が出てきたので内容を確認すると、どうも特定の遺言者に有利になっていて「おかしい」ということから裁判になり、有利な人が筆跡鑑定したところ、「同一筆跡である」ということになった。それに対抗して不利な人が別の筆跡鑑定人に鑑定してもらった結果、「偽筆である」という全く反対の鑑定結果が法廷に出されて裁判官も苦慮しているというのがある。ここでも本人性が問われているが、人為的な偽造をどこまで見抜けるかが問題である。

Bは、遺産相続をめぐる紛争は、裁判、調停をはじめ表面化しない争いを含めると相当数に上っている。そして、避けて通れないのが、紛争解決の費用、長期間紛争、親族間の遺恨である。裁判になれば、弁護士、鑑定費用など諸費用含めて最低でも10万円以上はかかってしまう。それにもまして懸念されるのが親子・兄弟・親族がバラバラになっていくことで、お金には代えられないできごとである。残された遺族にとっては、裁判に勝っても負けても和解しても親族間の遺恨に心が休まらない。

 では、これらの現象は、どうして発生するのか。単純に考えてみると、結果として現在の遺言制度が完全に真実を反映するようにはなっていないことを示している。今の制度は、全文手書きをもって「本人が書いたもの」という前提に成り立っており、他人が書いたものである可能性を考えていないのである。制度が完全なものならば、紛争の起きようがない。そして、遺言者は、このような現実が生じるのは、没後であるので知るよしもないため、生前の対策に気が回っていないのではないかと思われる。確かに、相続などの民事事件は、刑事事件ほど注目されないからいくら裁判に発展してもほとんどの方が知らない現実である。そのため、対策にうとくなりがちになっていると思われる。これを解消するために、国家機関として「公正証書遺言」を設けているが、それでも現実には紛争が絶えない。その点、鑑定人には、全国から筆跡、印鑑、指紋、筆記時期、特異筆記用具などの鑑定依頼が集中するので現実の傾向がわかる。その結果、遺言者は、自分の親族に限って「そんなことは大丈夫だ」という性善説の考えから積極的な知恵をめぐらしていないようである。

そこで、今の課題は、これら3つの問題点を同時に解消する方策はないか、ということが求められている。

 

2 遺言には知恵が必要

 皆さんも良く知っているエジプトのピラミッドがあるが、そこには、紀元前の王朝の莫大な埋葬品があり、これをめぐって長い歴史の間に盗掘者との攻防がみられた。ここで注目するのは、盗掘者に待ち受けていた仕掛けである。当時の覇者といえども死後の世界が自己の墳墓を永遠に守ってくれる保証もないし、期待もおぼつかないことを知っていたため、生前にその防止策を講じていたことである。それが、落石、砂埋め、迷路、落とし穴であったりする。日本でもこれと似たようなものが見られた。今から数十年前、徳川家の墓がある東京の増上寺で墳墓が発掘され、その一つに二大将軍秀忠の墓があった。それを掘ると、墓の上を覆う石盤があり、そこには「このところかなりあはれみてほるへからす」と書いてあったのである。その意味は、遺産とは異なるが、ここは墓で憫れむ処だから掘ってはいけない、というものである。将軍家徳川二代目といえば、十五代続く礎を作った全盛時代であるにもかかわらず、将来の衰退を予見してガードをかけていたのである(以上、弁護士石原豊昭著「遺言書の書き方と活用法」自由国民社発行から抜粋)

これらに共通するのは、不測の事態を想定して事前に対処していたことである。いかに全盛の覇者といえども何が起きるか分からないことを予見していたのだろう。

問題は、これら争いの種をピシャリと押さえる方策は何か、である。そこで登場するのが指紋鑑識である。いつも問われるのは「本人が自分の意思でほんとうに書いたのかどうか」であるが、今の裁判や紛争に「指紋鑑定書」があれば、一発で解決するものばかりである。表記の「指紋押捺(鑑定)付き遺言」は、このような鑑定事例から逆算して誕生したものである。これらの用例は、他でも見られる。例えば、宝石の売買に「鑑定書」が付いていることや、生命保険も没後の経済的救済を考えてのことだから同じような趣旨だといえるだろう。これらは、争うまでもなく信頼性を事前に確保していることに他ならない。

 

3 筆跡鑑定書があってもなぜもめる

現在、遺言書の真偽について判定するのは、もっぱら筆跡鑑定に委ねられている。では、筆跡鑑定が絶対確実か、というとそうではなく、実際の裁判では、同じ鑑定資料を鑑定しても、方や「合致」、他方は「不合致」と分かれて争われ、更に、第三鑑定人は「判定不能」となっては間に入った裁判官の苦慮するのが目に見える。

その要因は次のとおりである。人の筆跡には5通りあるといわれており、それは@老い等年齢変化、A病等による体調変化、B偽造文書等の偽筆韜晦文字(ぎひつとうかいもじ・似せて書くこと)、Cストレス等による心の大きな変化、D記具・天候・季節等の外的変化、の5つである。筆跡鑑定は、この5つを見抜いて真の書き癖=個性で判断する(名誉工学博士・筆跡鑑定人柳田律夫氏論)。だから、本物が病気や老いによって偽者になったり、偽者が偽筆とうかい文字によって本物になったりする。これは、筆跡が鑑定人の能力によって左右される部分が大きいことを意味している。すべての筆跡鑑定人が、これら5つの変化を見抜いて常に信頼できる鑑定をしているか、というと必ずしもそうではなく、現実に合否の衝突する裁判事例が物語っているように必ずどちらかが間違っている。事例からみて、筆跡鑑定の場合は、鑑定人の選択がとても大切になってくる。今や、「弁護士と医者と銀行は選ぶ時代」となって久しいが、「鑑定人」もその中に入っているといっていいだろう。ちなみに、選べないのは「親と学校の先生と裁判官」だという。

なお、印鑑については、三文判でも有効だから絶対の信頼には至らないのが現実である。また、印鑑偽造も精巧なものが出現しているのでなおさらである。

 

4 指紋押捺(鑑定)付き遺言の意義とは

 遺言の種類には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言がある。秘密証書遺言はあまり利用されていないと言うから、以下、2つの方法を中心に見る。

(1)【自筆証書遺言】の場合

自筆遺言証書は、文字通り自分ひとりが書いて自分で保管するから簡単にできる。しかし、本当に本人が書いたものかどうか信頼性が疑われることがある。このため争われるときの証明は、もっぱら筆跡鑑定に委ねられる。ここに、「指紋鑑定」を加えて鑑識してみよう。

自筆遺言証書の法的有効条件は、

@      全文自筆(手書き)であること(任意性の確保)

A      日付があること(時期の特定)

B      本人署名、押印があること(意思の確認)

の3つである。ここの最大の課題が「本人性の証明」である。@〜Bは確かに「人」が書いたことは分かるが、「書いた人」と「遺言者」が同一人かどうか、である。現在、もっぱら@〜Bで推定されている。しかし、筆跡も前述のようにもめる場合があり、絶対的な証明ではなく、完全ではないのである。

そこで、「指紋押捺(鑑定)付き遺言」とは、@〜Bの法定条件に加えて次の仕掛けをし、書いた時点の「本人存在証明」を明らかにして総合観察から「本人性の証明」をしようとするものである。例えば、犯罪現場の現場指紋が合致した人物を「犯人だ」と断定することと同じで、犯罪行為を証明するのではなく、「存在証明」をし、それ故「犯行」を推定しているのである。「指紋押捺(鑑定)付き遺言」も遺言書と同時に存在していたことを証明して「確かに本人が書いた」ことを推定するものである。その仕掛けは、次のとおり。

C      署名の下に自分の指を2本揃えて同時に2個の連続指紋(どの指の組み合わせでもよい)を押し、遺言書末尾には「以後、指紋押印がないものは無効である。」と明記する。写真撮影する。

D      遺言者本人の10本の指紋を押した指紋原紙を作成し、採取者2名(当社社員)が証人となる。写真撮影する。

E      その指紋原紙原本と指紋押捺してある遺言書を保管する。必要によりその遺言書の指紋と指紋原紙から「指紋鑑定書」(任意作成)し、確認した後封印して保管する。

F      当事務所は、遺言書、指紋原紙、指紋鑑定書を受託して貸し金庫に保管する。当事務所は、「遺言書・指紋原紙・指紋鑑定書預り証」を発行する。このとき、遺言書の寄託は、任意でいいが、指紋原紙だけは当事務所が保管しないと真性の担保は得られない。本人の指紋原紙が土台だからである。

G      当事務所は、遺言者に対し、年2回本人の指紋から本人の存在を確認し、遺言書等を維持管理する。

H      当事務所は、遺言書の効力が発生した時、正当な利害関係者の要請に基づき、預かっていた遺言書原本、指紋原紙及び指紋鑑定書を引き渡す。

I      上のCからFを書面で契約締結しておく。

こうすることによって、本遺言書が書かれたときには、その場に遺言者本人がいた存在証明が得られることによって本人性が証明できる。次に、遺言書を本人保管した場合、指紋押印が本人の意思に基づいたものかどうかは「2個の連続指紋」の「押捺行動推測」によって判断する。指紋制度が定着すると、意識のない時や火葬の前に指紋を押すことも可能だからである。また、遺言書を隠されても年2回の本人存在確認で本人の意思が確保され、同時に次の偽造遺言書の出現を抑止でき、例え出現したとしても簡単に見破ることができる。この時は、「隆線縁鑑定」といって指紋の特徴点ではなく、指紋線の形状を鑑定する。

 

(2)【遺言を全く考えていない】ときの場合

遺言を考えていない人は、「法定相続」を意味し、何も意思表示がなければ必然的に執行されていくからもめることはない、と思う人がほとんどだと思われる。ところが、盲点はここにあり、これは誤りで、相続人間の遺産分割の方が法定相続よりも優先している。こうしないと、先祖伝来の不動産は、どんどん分割されて小さくなってしまうからである。だから、遺言がないともめる。仲の良い家族ばかりとは限らないからやっかいであるし、高額の金銭がからむと人は変わる場合がある。「相続は人を狂わせる」といわれるのはそのためである。その手段として偽造遺言書が出てくる。この動機は、「自分が欲しい」「あの人にはやりたくない」という2つがある。

現実の鑑定事例は、自分に有利にしようとする者に、何もないから偽造遺言書が出現してくる隙間を与えていることにほかならない。「自筆」を証明しようにも、とき既に遅く、本人は墓の中ですからもちろんこの事実を知るよしもない。この間隙をついて偽造遺言書が出現してくるのである。偽造をするときは、誰が見てもはっきりとわかる字体で書く人はあまりいないから、かなり似せて書いている。また、偽造印鑑も同じである。むしろ、これからはここに注目する必要があり、今の紛争の原点になっている可能性が大である。この現象は、遺産分割協議書の相続人署名押印や養子縁組届にも見られることがある。署名押印した記憶がないのに、自分の署名押印が出てくる。遺言書が無いことは、ここまで起こりうる。しかし、自分の家族に限ってはそんなことがない、ということは充分理解できるが、鑑定事例に散見される以上、ただ単にあなたが「没後のできごと」となるので分かりようがないということだけである。

そこで、これらを抑止するには、「遺言は、法定相続とする」旨の自筆証書遺言又は公正証書遺言を残し、どの指紋でもいいから指紋を押しておくことである。そして、できれば本人の指紋原紙を残すのがベストであるが、最低限手形でもいいから押して残しておくことである。

 

(3)【公正証書遺言】の場合

公正証書遺言は、公証人が証明してくれるから、自筆遺言証書のような方法を取らなくても一応心配はない。しかし、公正証書遺言内容を撤回する旨の自筆証書遺言が出現するとこちらが優先してしまうし、隠蔽、破棄が絶対ないということもない。また、鑑定事例から公証人役場に出向いた者が「遺言者本人」に間違いがないという保証もない。その理由は、本人性証明のための証人二人は、初対面の場合もあり、印鑑証明等で確認すると偽造、不正取得によって通過されてしまう。公正証書遺言の真偽が争われる原因はここにある。

そのため、後日追求が可能となるための担保として指紋を1個押しておくとよいが、公証人の方は、「公証人法」によって定められているから現行法令の中で可能かどうかは難しい。しかし、有効であることは間違いがない。どのように有効か、というと、公証人役場で必ず「指紋を押す」という制度が定着すると、双子や偽造写真など代替人による「偽装遺言者」の排除が図られる。その理由は、押された指紋によって自らが公正証書原本不実記載罪であることを証明してしまうからである。いずれにしろ、どのように対応するかはあなた次第となる。

5 当初の遺言を変更したい時はどうするか

 前回の自筆証書遺言を変更したい時は、前の遺言書を取り消すために新しい変更遺言を作成した方が望ましい。この時も指3本を押す。そのまま当社に送ってもらえれば、指紋の遮蔽等必要な処置をして保管する。そして、何通か変更があった場合、最後のものが有効だから、その段階で当事務所が検認申請者(事実上の保管者)になって家庭裁判所の検認を受ける。

 

6 指紋鑑定付き遺言による偽造遺言書の排除

作成された正当な遺言書に指紋鑑定書を添えることは、同時に二つの働きをする。それは、指紋の「万人不同の原則」に基づいた証明力による「本人性の証明」と、抑止力による「偽造遺言書の排除」である。

このうち、「本人性の証明」については、前述のとおり現在の有効条件では、必ずしも確保できない部分を目に見えるようにはっきりとさせるものであった。次に大切なのが、「偽造遺言書の排除」である。「指紋鑑定付き遺言」を提示することによって偽造意欲を減衰させ、未然に防止する積極的な仕掛けとなる。生前に必要があって、前の遺言を取り消し、新しい遺言書を作る時も必ず指紋を3個押素必要がある。ここまで行えば偽造はまず無理である。

例え、没後、遺言書を見て不満に思う相続人が、指紋原紙から複製してそれを取り消す偽造遺言書を作ったとしても、それを見分ける鑑定方法があるからたちどころにばれてしまう。また、代替指紋を押したとすると誰が行ったのか残された指紋によって断定されるから、相続人排除の原因と証拠を自らが作り出して墓穴を掘ることは確かである。これが、抑止力の実態である。

何といっても重要なのが、遺言書に指紋を押しておくことと、遺言者本人の指紋原紙を第三者二人の証明付きで必ず第三者管理に残しておくことである。こうすれば、利己的な画策をする相続人に見せ付けることができる。これさえあれば、どんな展開にも対応でき、あなたの意思は活かされる。火葬にされてからでは間に合わない。

これらが、「ピラミッドの構造」や「徳川家の石盤」「宝石の鑑定書」に匹敵する仕掛けである。本人の没後に何かが起きるのか、ということに関係なく、親族のつながりを考えた時、起きる隙間を与えないで押さえ込む策略が肝心である。ちなみに、偽造遺言書は、「有印私文書偽造・同行使罪」という立派な刑法犯であるから、指紋の抑止力によって「犯罪者」を誘発させない措置は、遺言者の道義的責任と言ってもいいだろう。

 

7 遺言書の指紋押印のみで「自分の指紋原紙」がなかった場合はどうなるか。

 この場合は、「在宅指紋」を採取して照合する。「在宅指紋」とは、自分の指紋原紙と同じような原紙を採取指紋から作り出した指紋を言い、別名「組立指紋」とも言う。だから、限りなく本人のものと推定できる指紋を間接的に集めたものになる。

その作り方は、まず、遺言者が普段の家庭生活や勤務していた職場の品物から指紋を採取し、家族や同僚などの関係者の方々から指紋押捺の協力を得、採取指紋から引き算をして残った指紋群を確保し、次に、採取指紋群が付着していた物件同士で同じ指紋がないかどうか相互に対照し、合致する指紋があればあるほどより遺言者の指紋の確率が高くなっていき、それと関連した指の跡や行動を推測し、指種を決定して作成する。例えば、遺言者が普段自分で使用している銀行通帳、パスポート、日記帳、キャッシュカード等から同じ指紋があったら、家族には既に会わないから本人の指紋と断定してよいでだろう。よく、飛行機事故、大規模事故・災害でDNA鑑定とともに利用されている。

このようにして、「遺言書の指紋」と「合致した在宅指紋」が「遺言者本人の指紋」だ、という推定をしている。しかし、「合致した在宅指紋」を採取するまでには、相当数の物件から指紋採取する膨大な作業がある。過去の鑑定事例では、ダンボール箱2つ分の資料から260個の指紋を検出したところ、合致したというのがあった。しかし、合致する指紋があればよいが、必ず合致する保証はなく、やってみないと分からないし、検出指紋では、部分採取がほとんどだから効率も悪くなりがちである。「在宅指紋」の「本人性の証明」は、それほど大変な作業となる。しかも、裁判官の評価も絶対ではない。

この「在宅指紋」と「指紋原紙」では、照合効果、鑑定費用、労力を考えると雲泥の差である。だから、たった1度の採取で済む生前の指紋原紙が、とても貴重になってくるのである。この差を是非考えてみてほしい。

 

8 遺言書指紋鑑定・信託契約

当事務所では、公正を担保するため別紙のとおり「遺言書指紋鑑定・信託契約書」を用意している。言ってみれば、あなたの没後の「意思の保険」に当たる。いまだかつて誰もやったことがない初めての制度である。連続指紋を押すことは、1個が鑑定不能でも2個目、3個目が補うし、連続指紋の押捺形態で自然さを鑑定するための手段となる。遺言の書き方から偽造防止まで、当事務所は総合的な相談に応じているので、これから遺言を考えている方も、考えていない方も、それこそ、一生にたった一度で最後の仕事である。むしろ、「考えていない方」の方が、遺言書がないために突然現れたり、もめたりするから考え直す余地は大いにあると言っていいだろう。

では、遺言書の指紋は押し、自分の指紋原紙も自分で保管する、という方もいると考えられる。しかし、このようにすると、遺言書の隠蔽、破棄などによって存在そのものやそっくり作りかえられる恐れがあるので本人性の証明が絶対でなくなる。ここは、公正証書と同じ形体を採らないと意味がない。

今の制度では、巧妙な偽造を完全に押さえ込むことや病気、年齢変化を洞察することが事実上困難なため、紛争や裁判が絶えないのである。だから、筆跡鑑定に加えて何かを必要としている。そこで、指紋が、“分離できない唯一無二”であることと、指紋だけはまだ完全に偽造ができないからここに焦点を置いたものである。これまでは、自分の親族に限って心配ない、との「性善説」がほとんどだと思われるが、現実に、あなたが没する前と後では、力関係と感情の状況が一変する。いわゆる親族への「性善説」は、希望的観測であって没後の保証になるとは限らないからやっかいである。先人の例えのように、多くの鑑定事例から“人の振り見て我が振り直せ”を実践し、“備えあれば憂いなし”の先手必勝の心構えで作成すれば相続紛争は激減するだろう。それによって、次に喜ぶのは、裁判所である。争いがなくなれば調停、審判、裁判が減少する。

 

9 秘密性の維持

 本制度によると、遺言の内容が当事務所に知れ渡ることになる。この点については、次の3つの制約が働く。

@      行政書士法第12条【秘密を守る義務】。

A      「遺言書指紋鑑定・信託契約書」の第7条【守秘義務】。

B      「指紋鑑定人」は、法律上の規制はないが、「鑑定の性格」と「鑑定の倫理」による【信頼の原則に基づく守秘義務】。

によって制約されます。このうち、Bの意味について、「鑑定の性格」とは、「特別の知識経験でもって裁判所の判断を補助する機能を持っている。そして、一般的には、自然科学的な知識を補充するために行われる鑑定が多い。科学の裁判官と呼ばれるゆえんである」とされ、ここに「裁判所の補助的性格」を担っている。また、「鑑定の倫理」とは、その守るべき倫理として「常に中立公正」を明記している(以上、小谷俊著「実務鑑定概論」から)。このように、「鑑定人」は、どのような依頼人に対しても「等距離」に立つから守秘義務が働いている。

 

株式会社 齋藤鑑識証明研究所

        代表取締役・鑑識鑑定士・行政書士   齋藤  保

 

以 上